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tasogareru

たそがれ。かつで見たこともないような黄昏の風景を目指していた自分の記憶。 10年前くらいに全国各地のB級スポットを目指すパワーがあった頃、遺構巡り趣味が興じて開設したものです。 最近、旅いけてないなぁ・・・。

有名なイラストレータの画展に行ってきて思ったことを(番外編)

天野喜孝展があると知り、わざわざ行ってきた話。
オープン直後は混雑が予想されると記載があったが、予想通り並んでいた。
だが、実際にはそこまで人は多くなく(40~50人くらいは常時いたように思うが)、展示会を運営する会社が会場の入場制限を行っていたので並びが発生していたようだった。
ま~当然か・・・中で混雑するとゆったり見れないしなーと思ってたので。

待ち時間で看板を見ているとここは単なる絵画の展示会ではなく「絵画の展示販売会」だったことに気付く。
その会場にいた運営会社は、有名な画家などの展示会に集客して絵画を販売するという商法の会社だった(後で調べて知ったのだが)

私は特別天野喜孝さんの大ファンというわけでもないが、昔のFFシリーズは青春時代に結構プレイしていた。天野絵を見て昔ながらにあのFFシリーズのキャラだなとか・・・FF6の箱のイラストってちゃんと間近で見るとこういうタッチなんだ~・・・とか、とにかく見に来てよかったと感じました(小学生並の感想文かという突っ込みはさておき)

同時に過去の自分の目に焼き付けているイメージや記憶と擦り合わせていくと、実物ってこんなラフなんだなとか、アナログだからかやっぱり独特なタッチの絵だな・・・とか、率直に日本画の意匠をイラストに昇華させたのだろうか・・・なんて思って順路通り一枚一枚吟味していく。
でも結局なんだかんだで、やっぱり昔遊んだゲームの画展があるっていいなぁ・・・などと思いつつじっくり見ていった。

同時に展示されていた皐月恵さんの絵は版画職人の方との合作だったのだが、版画も含めとても綺麗に融和されていた作品群だったのでかなり見入ってしまった。
皐月恵さんのイラストは基本は美女系がモチーフなのだが、どこか全体的に憂いのある瞳や目の輪郭が好きだ。背景もモチーフと絶妙に世界観を醸し出す暗い色味などは、実に自分好みだった。天野喜孝から影響を受けている目もいいなと感じる。
私は皐月さんの絵を家に飾りたいなと思い、ポストカードとファイルを購入して、満足して帰宅したのだった・・・。

ただ上記とは関係ないが・・・いくつか思ったことを。

展示会で、天野絵を見て少し気になったのは絵よりも絵画の下に記載されてある値段でした。
値段はどの絵も6桁~7桁くらいの値段で、ボーナス払いとかクレジット分割回数までご丁寧な記載である。
まあ値段に関してはボッタクリ・・・ではなくわかるし、あくまでマニアやコレクター向けに買ってもらうためのものなんだろうなと。
それに天野喜孝の世界に1枚しかない原画とかならそのくらいの価値はあるんだろうと思える。生で見たら、そのくらいなら・・・と思ってしまう価格設定だ。本物の原画なら尚更である。

その絵画を購入したお金は展示会の運営会社に全部流れるのかなど邪な考えが巡ってしまったのも事実で、購入したらアーティストには1枚購入あたり、どれくらい還元されるんだろうとか。
もっと考えると、いくらか前もってアーティストの作品や名義だけ借りていくらかで前契約だけして、運営会社が殆どの販売利益は取るのだろうかとか。
じっくり絵を見ている人に声をかけて販売を勧めている運営会社というものも胡散臭い存在に感じてきたりもした・・・だがこの運営会社がいなければこのような展示会が全国展開されなかったというのも事実である。

個人で創作したイラストというジャンルを、無理矢理作り手への還元に結びつける行為はどうもやり方によってはニッチなジャンルに感じてしまう部分はあるし、非常に難しい部分はある。
結局イラストはデザインとしての価値で捉えるならデザイン料としての報酬になるし、作品や作家としての価値として捉えるならそれはアーティスト的な価値での値打ちになるのではないだろうか。このアーティスト的な価値というのが実にニッチに感じてしまうのである。

依頼されたものを一定以上の水準で描き報酬を受け取る商業デザイナーや商業作家とは違い、作家の作品の個性で勝負するイラストは1枚1枚に値打ちをつけるのが難しい。イラストの創作は労働とは似て非なるものである。商業であれば量や質で図れるがイラストの値打ちはそうではない。判断基準がどこにあるかといえば自分も結局よくわからない。

天野喜孝のイラストを見ていてこのイラストが人を呼ぶ理由ってなんなんだろうって考えた時、やっぱりイラストを見て思ったのは、やはりFFシリーズの存在が大きく、自分はそもそも作家としての興味はなかった。展示会に来た身としてはFFという作品に郷愁があるので惹かれて訪れたのである。

イラストレータにとっても個人のイラストや作品を作り手への還元に結びつける手段として、協力するスポンサーがいるならそれは良いことだと感じる。興味深い作品を作れる人は、より多くの人と結びつく社会への接点が必要だ。

殆どのデザイナーは会社の給料で生活をしている。漫画家小説家なら出版社からの印税や稿料が入ることで生活をしている。アニメーターならアニメ会社から出る給料だし。ゲーム制作ならそれはゲーム会社から出る給料なんだろうと思う。フリーランスも請負である以上、依頼主からお金を受け取って生きている。
ただイラストレータだけは挿絵とかデザイン料だけで食っていけるのかというと昔からずっと疑問符はある。

もちろんイラストにもファンを生み出すような価値があるのは前提だが、それを流通や商売として成立させるためのコンサルタントや、仲介業者が必要で、その労力や還元までのプロセスを肩代わりしてくれる何かがイラストレータにも必要だなと感じる。

ネットを使って作品を発信し続けるというだけではイラストは見てもらえても売れない、でも日々絵を描き技術は切磋琢磨されている中でも、べらぼうに上手い人や魅力的な絵を描く人はたくさんいる世の中だ。正直、お金を払ってもいいというレベルの人ばかりに思える。

だが、巷の絵描きは作品だけに命を注ぐのも大切だがそれだけでなく、もっと自分の絵の売り方を考え・売り込み方や自身へ還元される方法に目を向けるべきではないだろうか?

考えても私にはこういう画期的なアイデアがあって・・・!という大それたものは今も出ないが、昔何度も聞いた「アートでメシを食うのは難しい」という言葉の重みを今も思い出す。

何しろ種になる作品を仕上げるだけでもまずハードルが高く時間も要する、かつ同じようなことを考えている人間がたくさん集まる、そして何より芸術分野で問題なのは受け入れる門戸が異常に狭いことである。
毎年数回開かれる1000人の受験者がいて1~2人しか受からない会社があるとすればそれは相当な無理ゲーだと感じるだろう。このくらいだと思っていいと思う。
一般企業などは無数にあり、20人受けて1人とかそのレベルなら普通にいくつかぶつかってみて就職したほうがイージーである。
極端な例えだが今でもそれくらい芸術は門戸が狭い世界と思っている(マジで)。

社会の流通の枠組みの中でお金は回って労働と対価に金を得て、それで皆生活している。毎月貰える給料というのはそれだけでありがたいのである。

イラストという仕事にはまず作品の流通の枠組みが必要なんではないかと感じた。請負って描く、展示販売会、ネットだけというのは厳しいだろうなと。
現実的に考えるなら、イラストレータ達を複数雇って法人化して仕事にするという方向性になるが、そこまで上手くいっている会社を聞いたことがない。そもそもイラスト単体の請負業務なら作家性、実績などを売りにしたフリーランスの方がいくらか自由度も高く、儲かりそうである。

問題提起は出来ても、じゃあ解決策は?と聞かれると、やはり作品価値を有料で流通させてくれるスポンサーの存在が必要なんだろうなと思います。
誰かに見てもらう、自身の作品を発信する手段は今やネットがある以上どうとでもなるが、それだけでは収益に繋がるものではない。ネットでは無料で発信し流通してるが、誰もが無料で見られるという文化が当たり前になりすぎているのが問題でもある。

イラストは有料になったら見るのかといえばわざわざ誰も見ないかもしれない。いや私でもネットで有料なら躊躇う可能性は高い。有料でも観たいと思えるようなコンテンツとして整備されていたとしても、相当なクオリティが求められるだろう。

巨額の制作資金を掛けた映画やアニメドラマなどが月額制で見放題のネトフリやプライムビデオが身近なものとして認知されているが、それはやはりハイクオリティな作品群をいつでも安くで楽しめると言うメリットが非常に大きいからだ。イラスト1枚とはコンテンツそのものの集客力が違う。

ゲームなんかもプロスポーツ化が進んだのは、企業がお金を出して大会を開き競技人口を増やすことでの企業宣伝や、大会の配信ビジネスでサブスクでの収益見込がある。だから、企業もそれに投資して何とかビジネスとしても成立させようとしている。
自社のゲームの宣伝だけじゃなく、eスポーツビジネスに力を入れているカプコンなんかは戦略的にも先見の明がある投資をしていると思う。何より最近開かれたカプコンカップの優勝賞金が1億というのは驚いた。1億というビッグマネーとなるとそれだけ皆注目するし、競技人口が増えるきっかけにもなるのではないかと思う。

eスポーツの話で脱線したが、絵を描く行為ってのは昔から孤独でクローズドな世界ではあるけど、作品を商品として流通させる枠組み、そして最も大事な事は、絵描きやスポンサーをその気にさせる枠組みがもっと必要なんじゃないかな?

・・・ここまで書いて、いやいや1枚のイラストを収益化するなんて、その土台があればどうとでもなりそうだけど実現するまでの労力・時間を割いてまで、やる価値はあるのか?とかね。

月額会員制だが、著名なデザイナーやイラストレータ含め気鋭の作家の作品を投稿できて配信もできるサイトなんかはどうだろうか?
海外の海賊版が多い中、きちんと著作権を管理できるという前提になるが。漫画ではそういうサイトはあるしアプリも出回っている。
イラストでもPixivのような無料で誰でも参加できるタイプのサイトはある。でも収益メインではなくあれは交流や趣味やSNSといった類を出ないものだと思う。
しっかりと作家に還元できるタイプの構造を作れたら流行るかはわからないが、賑わうのではないか?

でもそれを実現するにも結局作家も見る人もWINWINになれるような構造作りと、資金を投資して運営するスポンサーが必要なのである。

そんなことを思った私は、そんな邪念を抱きながらイラストを見てしまう人間になってしまっていた。

それでも、心を動かされるイラストは好きだし、描くのも、観るのも私は未だに好きなままなんだなと思う。
画展にいってみて、色々と昔のことを思い返してしまったのであった。
久しぶりに筆やタブレットを触ることから再開しようかな。なんて考えているそんな暢気な私である。いやいやそもそもPCの古びたOSを積み替えるところからか・・・。

人生は行動に伴う結果、何が起こるかは誰も完全に予見できない。
ただひとつ確実なのは、アクションを起こせばその反応は大なり小なりある。逆に何もアクションを起こさなければ結果としては現状と変わらず何も起きないのである。
行動は変化を伴うので苦痛もあるが、大きく人生を変えるきっかけになる。

何が言いたいのかわからないことを文章に凝縮して一気にまとめてみた。
自分は相変わらずわかりやすく文章を書くのが下手である。
どうしても冗長になりすぎるので端的に箇条書きにでもして書けばいいのはわかっているが、端的にまとめて書くのは自分の性質に合わないので、やっぱりこうして適当に言いたいことを書き殴るのが楽しいのである。こういうところは20年前から変わってないなと感じてしまった。

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